やっと、あったかいと感じる日が続くようになり、新緑が目に優しく、草花も次々と春の顔を見せてくれるようになりましたね。
季節は『穀雨』へと巡りました。

穀雨(こくう)とは、たくさんの穀物(米、麦、粟(あわ)、稗(ひえ)、黍(きび)、豆などの類)に、たっぷりと水分と栄養がため込まれ、元気に育つよう、天からの贈り物でもある恵みの雨が、しっとりと降り注いでいる頃のことです。

それだけに、雨の名が多くあります。
百穀を潤し芽を出させる恵の雨「百穀春雨(ひゃっこくはるさめ)」「百の雨」
穀物を育む雨「瑞雨(ずいう)」
草木を潤す雨「甘雨(かんう)」
春の長雨「春霖(しゅんりん)」
開花を促す「催花雨(さいかう)」
菜の花が咲くころに降る「菜種梅雨(なたねづゆ)」 などなど。
という言葉があるように、南の地方ではトンボが飛び始め、冬服や暖房器具とも完全に別れる季節です。
変わりやすい春の天気もこの頃から安定し、次第に日差しも強まりはじめます。
穀雨は、春の最後の二十四節気。
穀雨を目安に衣替えをしてみてはいかがでしょうか。




↑乱切りにしたジャガイモとつぶしたにんにく、塩、ブラックペッパー、みじん切りにしたローズマリー、オリーブオイルを混ぜて200度に熱したオーブンで20~30分焼くだけのローズマリーポテト。
ほくほくとしたジャガイモに、ローズマリーの香りとぴりっと効いたブラックペッパーが絶妙な味わいです。







穀雨の《七十二候》
・初候:葭始生(あしはじめてしょうず) 4月20日〜4月24日頃
・次候:霜止出苗(しもやみてなえいずる)4月25日〜4月29日頃
・末候:牡丹華(ぼたんはなさく) 4月30日〜5月4日頃
《葭始生(あしはじめてしょうず)》

葭の新芽は、水面から角のようなとがった芽が出てくるので「葦牙(あしかび)」、「葦角(あしづの)」、「葦の錐(きり)」などと呼ばれます。
葭は夏に背を伸ばし、秋に黄金色の穂をなびかせます。
春になって空気が緩み始めると、「春眠暁を覚えず」という言葉を思い出しませんか?
「春めいて朝が温かくなり、気持ちがよくてつい寝坊してしまう」といったニュアンスで使われがちですが、実は違うのだそうです。
「夜明けが早くなって、いつの間にか朝が訪れるなんて、つくづく春だなぁ」という意味なのだそう。
朝の訪れが早まってくる春という、季節を感じる言葉だったのですね。
《霜止出苗(しもやみてなえいずる)》

種籾(たねもみ)が芽吹き、すくすく青々と伸びていきます。
霜は、農業に対する影響が大きく、特に茶葉にとっては大敵です。
稲の種は直接本田へはまかず、20センチほどに生長してから移し植えます。
こうする方が水害を避けるのにも、よい苗を育てるにも都合がいいからだそうです。
その苗を育てる小規模な田んぼを「苗代(なわしろ)」といいます。
田植えの準備が始まり、活気にあふれている農家の様子が連想できる季節ですね。
《牡丹華(ぼたんはなさく)》

牡丹は、晩春から初夏にかけて直径10~20cmの豊麗な花をつけ、色も紅・淡紅・白・紫など様々です。
春から夏へと移りゆく季節の橋渡しをするように咲き始めます。

そして立春から数えて88日目、穀雨が終わるこの頃に八十八夜を迎えます。
八十八夜(はちじゅうはちや)とは季節の移りかわりの目安となる雑節(ざっせつ)のひとつです。
「夏も近づく八十八夜……」という『茶摘み』の歌詞の通り、この頃から霜が降りなくなり、気候が暖かく穏やかになるので、稲の種まきや茶摘みの目安とされてきました。
また、「八十八」を組み合わせると「米」という字になることや、「八十八」は末広がりで縁起がよいため、豊作祈願の行事や夏の準備を始める吉日ともされているそうです。
この頃にふいに冷え込む夜があり、霜が降ると農作物に多大な影響があるので、くれぐれも油断はしないようにと、この霜を「八十八夜の別れ霜」と呼んでいるそうです。